REALTPEC編集部です。デジタル技術を活用した自動車生産ラインの検討やロボット作動時の不具合予測などは、今は効率的な製造準備に欠かせないものになっています。今回は、その技術の中核ともいえる「デジタルシミュレーション」について紹介します。
2004年入社。トヨタ自動車九州株式会社でボデー工場の新ライン工程計画から量産開始までの製造準備業務を担当し、2006年からロボットのシミュレーション業務に携わる。2018年、ロボットエンジニアリング部第2ロボット技術室ロボット技術3グループのマネージャーに。
私の担当業務は、デジタルシミュレーションの中でもロボットを用いた検討業務になります。実際に製品や生産ラインの設備を作る前の段階で、3Dデータを用いたバーチャル空間でシミュレーションをすることにより、早期に不具合を摘出し、対策案を決め、その対策案が成立することを検証しています。シミュレーションにより、やり直しを防止し、正確な自動車生産ラインの構築や品質の向上、さらに、自動車の生産開始までの期間を短縮することができます。
ロボットを用いた検討業務では、デジタルシミュレーション技術の活用は必要不可欠です。何故かというと近年ロボット利用の増加に伴い、動きや制御信号など複雑化しており人の目による不具合摘出には限界があるからです。「既存の生産ラインを別の車の生産ラインに改編したい」というお客様からの要望に対し、正確な検討が可能なデジタルシミュレーション技術が威力を発揮します。自動車1台当たり何秒で生産するという計画に応じて、ロボットの台数と配置の検証、工程の数と配置の検証、設備やロボットの移動動作の干渉回避、制御信号の入力など、漏れなく行える事も強みだと思います。さらに現場における作業の効率化を求めて、各ロボットの動作プログラムを何通りも検証し最適化できるため、現場でロボットを動かしながら姿勢を一つ一つ入力していく場合に比べて、大幅に時間を短縮できます。またこれらは新しい車の投入が決まった時に毎回行う事で、シミュレーションとしてもレベルアップする技術であると思っています。
まだ誰も見たことのない、自動車の形状や生産ラインをバーチャル空間で最初に見ることができ、自分が企画した工程が現実のものになることは感動的で、この仕事の魅力だと思います。また、シミュレーションすることで不具合を事前に発見し、その対策案を採用していただくことは、大きなやりがいとなっています。お客様から「さすがですね」「TPECさんに見てもらってよかった」などのお言葉をいただいた時が、一番嬉しいです。
こうしたバーチャル空間のデジタルファクトリー(仮想工場)を活用することにより、現場に行かずとも世界中の工場をシミュレーションすることが可能となりました。そのため、福岡や愛知にいながら国内はもとより欧米やアジアなどの工場とオンラインで打ち合わせや提案を行っています。時には現地に赴くこともありますが、日本人スタッフがいますので特にコミュニケーション上で困ることもありません。そういう意味では向き、不向きはあまり関係ない仕事だと思いますし、真摯に取り組めば多くのやりがいを感じることができると思います。